メタバースの歴史とGAFAMの参入動向

Facebook社が社名を『Meta』に変更して以降、多くの企業からのメタバース関連の動きが活発化しています。

Meta社の大きな競合となるのはやはり同じくIT企業の雄であるGoogle・Amazon・Apple・Microsoftでしょう。

今回は現在注目を集めているメタバースについて、これまでの歴史とGAFAMの取り組みをまとめてみました。

メタバースの概要について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

目次

2000年代のメタバース『セカンドライフ』

メタバースの歴史は意外にも古く、実は2000年代にその原型となるものが存在していました。

それが、2003年にLinden Lab社がリリースした『Second Life』です。

セカンドライフでは、自身の分身となるアバターがオリエンテーションランドと呼ばれる仮想空間に入り、他のユーザーとコミュニケーションを取れることが特徴的です。

これだけでもオンラインゲームが少なかった2000年代当時としては画期的でしたが、それに加えて、稼いだゲーム内通貨を現実世界の通貨に換金ができるという、約20年が経過した現在でも珍しいシステムを採用していました。

ゲーム内で得た土地を高額で転売して、米ドル換算で100万ドル以上を稼いだユーザーが現れたことは大きな話題になり、ピーク時にはアクティブユーザーが100万人を超えるほど人気を誇りました。

しかし、その人気の高さ故にサーバー環境がユーザー増加に追い付かず、同時接続人数を減らすための負荷軽減として、免許制を導入したところ、ユーザーが手軽に参加できなくなり、あっという間に衰退してしまいました。(2021年11月現在でもサービス自体は継続しています。)

セカンドライフの衰退と同時期にはFacebookをはじめとした誰でも手軽に使えるSNSが台頭してきており、のちに登場した『PlayStation Home』『はてなワールド』『アメーバピグ』などといったメタバースも衰退していきました。

やはり、手軽なコミュニケーションツールとしてのメタバース活用は当時の技術では早すぎたようで、現在に至るまでSNSに淘汰され続けてきました。

メタバースが再熱した理由

SNSの利用が世界の常識となり一度は忘れ去られたメタバースですが、近年は再び注目が集まっています。

メタバースが再熱したことには二つの大きな理由があります。

理由①:PCスペックの飛躍的な向上と、高速通信技術の発達

セカンドライフが全盛だった2007年ごろは、現在主流となっているCPUである『Intel Core iシリーズ』すら登場していない時代。

今ではパソコンの性能が当時ともはや比べ物にならないほど進化しているだけでなく、誰もが当時のパソコンよりもはるかに高性能なスマホを手のひらに持っています。

通信技術の変化もすさまじいです。2000年代の3G回線は最大通信速度が64~384kbpsでした。

それに対して2021年現在、全国への整備が進められている5Gでは約10Gbps(10,000,000kbps)と、圧倒的な高速化を遂げています。

これらの急速な技術の発展により、今まではSF映画で描かれていたような仮想空間がまさに現実的に可能なところまで迫ってきているのです。

理由②:新型コロナウイルス蔓延による仮想空間の需要増加

メタバース再燃の決定打となったのは、新型コロナウイルスによる巣ごもり時間の増加。

感染拡大防止による外出制限により、家にいながら大勢の人との距離を密に感じられるメタバースは大きく注目される結果となりました。

その活用は、ゲームや大型イベントなどのエンタメから、会議などのビジネスの場面まで多岐にわたっています。

コロナ禍で人々の分断・孤独が大きな問題となっている現在、メタバースがそれを払拭するための居場所として機能しはじめているのです。

GAFAMのメタバース動向

ここからは、現在の世界経済の要となっているGAFAM各社のメタバース参入動向を見ていきます。

各企業がそれぞれ異なる戦略ビジョンを持っていることが興味深いです。

まずは、メタバース参入に最も目立った動きを見せるMeta社の取り組みを見ていきます。

Meta(Facebook)

社名変更に伴ってメタバース開発へ本格的な先陣を切ったメタ社。

今後二年間で約5000万ドル(55億円)を投資すると意気込み、まさにメタバースの覇権を狙っています。

メタ社は、8月にバーチャル会議のためのメタバース『Horizon Workrooms』を公開しています。

画像出典:Meta

Horizon Workroomsでは、VRゴーグルを介して同じ仮想会議室に集まることで、利用者が物理的にどこにいても同じバーチャルルームで一緒に仕事をすることができます。

CEOのザッカーバーグ氏は「次の5年の間に、当社は次の段階として、ソーシャルメディア企業から、メタバースの企業として見られるように効果的に移行していくことになると思います」と述べており、10月29日に開催されたConnect 2021では、今後のメタ社のメタバースへの数々の挑戦を大々的にアピールしています。

Microsoft

マイクロソフトは、2021年3月にMR(複合現実)のフレームワーク『Mesh』を発表。

バーチャルの世界と現実世界を繋げることが可能になる技術として、今後の活用が注目されました。

そして同年11月に会議ソフトteamsにアバターで参加できるようにする『Mesh for Microsoft Teams』を2022年中に提供する計画を発表しました。

マイクロソフトは、オンライン会議が急増している中、ビデオをオンにすると家が映り込むなどのプライバシーの問題や、ビデオに映りながらの作業に集中できないなどの理由から、多くの人がカメラをオフにしてリモート会議に参加していることを指摘。

Mesh for Microsoft Teamsによって、アバターを用いて表情豊かに会議への参加をすることが可能になることでコミュニケーションが活発になる上に、上記のようなカメラをオンにしたときに気になる問題が解消されます。

Apple

Appleは早ければ2022年初めにも、最新のM1チップ、ハイエンドディスプレイ、センサーを搭載した同社初のMRヘッドセットを発売する計画を進めているようです。

※公式イメージではありません

これまでメタバース分野に向けて目立った動きを見せて来なかったAppleですが、MRヘッドセットの登場により、Meta社が既に提供しているVRヘッドセット、Oculus Quest 2と競合することになります。

MRヘッドセットは、現実世界に映像を映し出すAR(拡張現実)とVR(仮想現実)の両方の機能を持つことになりますが、高品質のグラフィックを用いたゲームへの使用のために、VRの面が強化されると予想されます。

Google

Meta社がVR(仮想現実)、MicrosoftとAppleがMR(複合現実)を作り上げている一方で、GoogleはAR(拡張現実)を志向しています。

ARは、現実世界にバーチャルの視覚情報を重ねて表示し、現実世界に広がる景色に情報を追加する技術です。

2016年にポケモンGOがリリースしたことで、ARは世界的に認知されるようになりました。

ARはMRと似ていますが、MRが仮想世界をベースにしているのに対して、ARはあくまで現実世界に基本に映像を拡張することを目的としているという違いがあります。

ポケモンGOの運営会社であるGoogle傘下のNiantic社は、2021年11月に開発者向けのAR開発プラットフォーム『Lightship』の提供を開始し、メタバースに向けた巨額の資金調達の実施をしました。

Nianticは、仮想空間に『のめり込む』メタバースに否定的な考えを持っており、あくまでも現実世界をベースにしたメタバースを定義として掲げています。

Googleはかなり早い段階からAR技術への本格的な取り組みを行っていました。

2012年には既に『Project Glass』でARメガネを発表しており、一般販売は停止したものの、今もなお企業向けの提供を続けています。(DISCOVER GLASS ENTERPRISE EDITION)

その一方で、2016年に発表されたVRメガネの『Daydream View』は利用減少に伴って2019年に販売を終了しています。

このような背景から、Googleは日常生活を『手助け』するようなメタバースの構築を目指しており、セカンドライフのような仮想世界に入り込むメタバースを支持していないのです。

このことから、GoogleはNianticと共に、現実世界とARの視覚情報を融合させていく形で独自のメタバースを展開していくと考えられます。

Amazon

Amazonは、メタバースに対して直接目立った動きを見せることはありません。

しかしAmazonは世界最大のクラウドサービスのAWS(Amazon Web Services)を提供していることで、メタバースの市場が大きくなればなるほど重要な役割を担う可能性があります。

世界最大のクラウドサービスであるAWSは、2021年第1四半期において世界全体のクラウドシェアの32%を誇っており、トップを独走している状態です。

先に紹介したNianticのポケモンGOや、日本のスマホ決済でトップの利用率を誇るPayPayもAWSでデータの管理を行っているのです。

これからメタバース世界の構築が進んでいくにつれて、AWSの需要はますます上がっていくと予想されます。

メタバースが次世代の『居場所』となる

今回はメタバースの過去と、現在のGAFAMのメタバースの参入動向を見ていきました。

メタバース自体は2000年代前半には形にはなっていたものの、やはり技術的にまだ早すぎたためその勢いは一度沈下しました。

しかし、現在の凄まじい技術の発展とコロナ禍での仮想空間への需要ができたことでフェイスブックが動き出し、一気にメタバースの競争が再燃することになりました。

現在の世界経済の要となっているGAFAMを見るだけでも、それぞれのビジョンが細かく異なるものの、着々とメタバース実現への準備が進んでいることがわかります。

今後どの企業がメタバースの覇権を握るのか、そしてどんな世界が広がっていくのか注目です。

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