2021年2月ごろから大きな注目を集めているNFT(Non Fungible Token)。
同年9月時点のNFT市場の合計時価総額は141億9000万ドル(約1兆5885億円)とされており、2022年にはさらにその市場が拡大していくと予想できます。
しかし、それに伴って今後ますます増えていくと予想されるのがNFTの悪質な利用です。
NFT自体がまだまだ発展途上のビジネスなために法整備が進んでいないことから、その特性について十分に理解する必要があります。
今回は、NFTが抱える問題点について紹介していきます。
NFTについての詳しい情報はこちらの記事をご参照ください。
厳密には『所有権』の証明ではない
そもそもNFTとは、デジタルデータの所有を証明する=所有権だと思われがちですがこれは大きな間違いです。
日本の法律上の所有権はその対象物が『動産』と『不動産』の2つに分けられます。
まず、『不動産』は土地と定着物(土地の上に建つ建物)のことを指し、文字通り動かない財産のことをいいます。
一方の『動産』は動かすことのできる財産のことです。民法第86条で「不動産以外の物は、すべて動産とする」と定義づけされています。
このことからNFTは不動産以外の物、つまり動産なのだと解釈できそうですが実際はそうではありません。
民法第85条には以下のように『物』の定義が記載されています。
この法律において「物」とは、有体物をいう。
民法第85条より
有体物とは、「液体・気体・固体」のいずれかであること、つまり形のある実体を持っている物体のことを指します。
このことから、コンテンツなどの情報(無体物)であるNFTは実体を持たないため、所有権の対象にはなりません。
NFTはあくまで「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のことで、それ自体がデータの所有権を裏付けるものではないのです。
そんな所有権の存在しないNFTがもしもアカウントの乗っ取りなどにより盗まれた場合、所有権の行使をして返却を求めることは難しいです。(アカウントの乗っ取り行為自体は『不正アクセス禁止法』の違反にはなります。)
また、NFTアートを購入したからと言って、その作品の著作権が譲渡されるというわけではありません。
NFTの購入者は作品をコピーまたは改変して頒布すると著作権違反に当ります。これは音楽CDを買うときと同様です。
このような権利関係がはっきりと整理されていないままNFTが売買され続けると、権利関係の処理を巡ったトラブルが頻発する恐れがあります。
このように、NFTの法律整理はその発展に追いついておらず、NFTの普及には『デジタル所有権』なる法律の整備が必要になります。
マネーロンダリングに使われる
マネーロンダリング(Money Laundering:資金洗浄)とは、犯罪によって得られたお金(汚れたお金)をその出所や所有者がわからないようにして、捜査機関による差し押さえや摘発を逃れるための行為のことを指します。
近年は高額なNFTの売買事例が出てきていることから、NFTマーケットプレイスで高額なアートを購入し、それを転売することで資金の洗浄が容易にできてしまいます。
こうした悪質な行為を撲滅するために取引システムの改善が急がれています。
ブロックチェーン分析大手のチェイナリシス(Chinalysis)は犯罪の疑いがある取引を検知し、詳細な調査を行うための分析ツールを開発しています。
健全なNFTビジネスの拡大のためには、このような規制やリスク管理の問題にしっかりと対処していくことが求められています。
NFTを利用した詐欺に注意!
NFTはまだ開拓中のビジネスのため、ユーザーの理解度の低さからそれを利用した詐欺が頻発しています。
ここからは、実際にあったNFTの詐欺について紹介していきます。
“唯一無二のニセモノ”が出品される
2021年3月ごろ、世界最大手のNFTマーケットプレイスOpen Seaでブロックチェーンゲーム「The Sandbox」の仮想土地である「LAND」を偽ったNFT画像が販売されました。
本来の「LAND」はETHブロックチェーン(ERC-721)上のNFTトークンで、購入後は「The Sandbox」内の土地の一部を自分のエリアとして利用できるようになるというものです。
しかしここで出品されたNFTはなにも効力がないタダの画像。つまり『唯一無二のニセモノ』が購入できてしまったというわけです。
問題となったアカウントは現在削除されていますが、NFTの画像データそのものはスクリーンショット等での複製が容易なため、いたちごっこが続くことになるでしょう。
NFTはデータの改ざんが極めて困難なため、本物のLANDを低価格で無断出品する行為はほぼ不可能であると思われます。
しかし、購入時のプレビューがただのコピー画像でもそれを別のNFTとして出品することはできてしまいます。
このような事例から、『NFTになっているから本物である』という先入観を持ってしまうと危険です。
他人の作品を無断コピーでNFT化
また、他人の絵をNFTアートとして無断で盗用することで収益を上げようとする人も存在します。
無断コピーしたデータをNFTにして『本物』だと偽ることは容易なため、アーティストの目に入らないNFTマーケットでこっそりアーティストに成りすましをしてNFT作品を出品することができてしまいます。
これは、騙されて購入してしまう人々はもちろんクリエイターの尊厳までも踏みねじるような許されざる行為です。
NFTの詐欺商品を買ってしまわないためには、予めクリエイターの公式サイトや活動しているSNSを確認しておきましょう。
また、できるだけ大規模で信頼性の高いマーケットプレイスを選ぶことも効果的です。
製作者が逃亡してしまったことも……
偽物のNFTが出品されるという事例の他にも、クリエイターがNFT制作を放棄して失踪するという事件もありました。
詐欺が行われたlconicsというNFTプロジェクトでは、17歳のクリエイターが高クオリティの3DモデルのNFT作品を8000点提供するとされていました。
しかし、実際に購入した人が受け取ったのは3DモデルのNFT作品ではなく、以下のような絵文字をただ並べただけのなんともふざけた画像だったのです。
このNFT作品が販売された後、作者はTwitterアカウントを消して逃亡。
NFT製作者の逃亡例はこれだけではありません。AstroSolsというプロジェクトが同様の流れでの詐欺行為を行い、購入者は受け取ったNFTの情報を読み込めなかったという被害がありました。
NFTを購入する際はこのような出品者による詐欺を想定して、それがどのような法に触れるのか、被害に遭ってしまったときにどのような対処をするべきなのかを考えておく必要があります。
投機目的でNFTを買うのは危険
今回はNFTの問題点である権利関係の法整備の遅れや、偽物のNFTが出品されている事例を紹介してきました。
これらの問題が頻発すると、NFTやブロックチェーン技術そのものへの信頼性が薄れることによってNFTの全体的な値段が一気に暴落してしまう=『NFTバブル崩壊』が来てしまう可能性があります。
株式投資に『靴磨きの少年』という逸話があるように、NFTへの注目が過熱状態になると先行投資を行っていた人々が一斉に売りに走る可能性があります。
NFTが大きな注目を集めている今こそ、投機目的のみを理由にNFTを購入することは危険だと言えます。
また、日本国内のNFTの市場は海外から遅れをとっています。世界最大規模のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaは2017年12月にサービスを開始したのに対し、国内初のNFTマーケットプレイスのCoincheckは2021年3月から開始されたばかりです。
そんな中、来年2022年には日本最大手のECである楽天がNFTへの参入で「NFTの民主化」を目指すと宣言しています。
楽天は、現在のNFT市場が一部のリテラシーの高い層による投機目的での利用が中心になっているということに警鐘を鳴らしており、日本円や楽天ポイントでの決済を可能にすることで一般層への認知を広めることを狙っています。
まだまだ発展途上にあるNFT。今後の普及のためには新たな法整備やプラットフォームの規制・リスク管理、ユーザーからの正しい理解を得ることが必要不可欠です。
投稿者プロフィール
- レトロな街並みや音楽が好きな20代。読者の皆様に新しい発見をお届けしたいと思います。よろしくお願いします。
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