Wolfgang Tillmans『“Atair”』緻密な計算で被写体に命を与える写真家【STRAYM】
Wolfgang Tillmans(ヴォルフガング・ティルマンス)はドイツ出身の写真家で、ロンドンとベルリンを拠点に活動しています。
アートというと絵画や彫刻などのものを創造する方も多いと思いますが、芸術写真も別名ファインアート・フォトグラフィーと呼ばれる立派なアート作品です。
芸術写真(ファインアート・フォトグラフィー)は、写真家個人のビジョンを反映して撮影された作品であり、商業写真は、被写体もしくは第三者の要望に従い客観的に表現されたものが多いですが、美術写真はそれとは対照的に写真家の主観的な視点で表現されます。
今回は現代欧州の最も重要な写真家の一人であるヴォルフガング・ティルマンスについて紹介いたします。
Wolfgang Tillmansとは
1968年、ドイツ・レムシャイトで生まれ、1980年代末から友人たちやクラブ活動などの彼自身の日常的な光景をテーマに写真撮影を始めました。
身の回りの人物、洋服、モノや風景など、普段は何気ないものを自然でシンプルに親しみ深く表現するスナップ的作風が、 特に若者世代からの人気を集め、その後ファインアートとして高い評価を集めていきます。
1990年代初めに、ロンドンに移住し『i-D』『THE FACE』などの雑誌で写真作品を発表し注目され、
1993年には、ケルンでの個展以来、拠点をニューヨーク、ロンドンと移しながら 世界各地の主要な現代アート展覧会や雑誌に作品を発表します。
スナップ的ポートレート、風景、静物、ヌード、天文学的イメージ、抽象作品など多様な作品を発表し続け、2000年には現代美術において重要な賞のひとつとして知られる『ターナー賞(英国)』を受賞しました。
映像表現にも関心を持ち、2003年にTate Britainで英国初の本格的回顧展を開催、2006年にはシカゴ現代アート美術館で米国初の本格的回顧展を開催します。
2009年にはヴェネツィアビエンナーレなどに出展し多くの注目を集めました。
2015年、写真界に多大な功績を残した写真家に贈られる『ハッセルブラッド国際写真賞』を受賞し、同年に国立国際美術館で大規模な個展『Your Body is Yours』を開催しました。
2017年、テート・モダン(ロンドン)で『ティルマンスの回顧展』が開催したことも重なり作品の価格が急騰、同年のアート写真高額落札ランキング上位20位の中にティルマンズの作品が、アンドレアス・グルスキーの5作品を上回る8作品も含まれました。
このように現代の欧州でとても重要な写真家のひとりとして高い評価を得ているのがWolfgang Tillmansです。
『“Atair”』について
本作品はデンマークの彫刻家『ベルテル・トルバルセン(Bertel Thorvaldsen)』の彫刻を被写体に、綺麗に深く細部までを写し出したもので、STRAYMでは珍しい芸術写真に分類される作品です。
被写体へ当てる光の角度、アングル、作品との距離などを繊細に計算し、撮影することで彫刻の人と鳥はまるで生きてるかのよう美しく表現されています。
このように被写体に命を吹き込むこの計算はティルマンズにしかできないと言えるでしょう。
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