国立科学博物館が仮想の展示空間「たんけんひろば コンパスVR」公開

国立科学博物館は、所蔵品の活用推進に向けて、デジタル化した標本や資料をバーチャル空間で展示するプラットフォームを開設し、プロトタイプ空間の「たんけんひろば コンパスVR(以下、コンパスVR)」を公開しました。

国立科学博物館は1877年に創立され、150年に迫る歴史を持つ施設。標本だけでも約500万点という膨大な収蔵品を有し、自然史・科学技術史に関する国立唯一の総合科学博物館として、様々な調査研究や、教育支援などの面で貢献してきました。

しかし、館を訪れることが困難な人へサービスをどう提供するか、あるいは収蔵庫からの移動が難しい標本・資料をどう活用するかといった点で課題を抱えていました。また、展示物の鑑賞においても、上下や背面、内部など自由度の高い視点と距離から観察ができないか、といった改善を検討していました。

こうした課題の解消に向けて、館内の実空間を3DビューとVR映像で体験できる「おうちで体験!かはくVR」の公開や、巡回展示と連動してVR映像を活用した企画を実施するといった試みを続けてきましたが、今回はそうした取り組みをさらにステップアップ。仮想の“展示空間”を新設し、利用者はいつでも・どこでも、より自由に展示物が鑑賞できるようになっています。

この取り組みで活用されているのは、NTTデータNJKが提供する「STYLY.biz」というxRトータルソリューションサービス。STYLY.bizのプラットフォーム上に築かれた仮想展示空間では、利用者が一人称視点で移動することができ、同時にツアー形式で複数人が参加するようなイベントも開催可能な設定になっています。

コンパスVRの中では、ティラノサウルスの全身骨格化石や、様々な動物のはく製標本などを3Dデータで展示。通常は公開されていない標本などもラインナップされており、利用者はそれらにギリギリまで近づいたり、上下左右など様々な視点から観察したりすることができます。

また、展示物の鑑賞だけでなく、空間内に隠れているはく製を見つけて展示台まで移動させたり、単体のツノとそれを持つ動物を組み合わせたりするなど、ゲーム感覚で楽しめる要素も盛り込まれています。

このコンパスVRは、PCやスマホ、タブレットなどのデバイスでも利用が可能。ゴーグルなどの専用機器を持たない人でも楽しめるように広く門戸が開かれている点も、これまでの取り組みから進化している点だといえます。

こうした取り組みは、市民に対するサービスの拡充という面に加え、博物館の展示・企画や所蔵品などの資産をデジタルアーカイブとして残す機能も持っており、非常に有意義なものだといえます。

同館は今後もコンパスVRを活用し、複数の展示室からなる有料の企画展示の開催も予定しており、将来的には他の博物館・美術館などへも仮想空間の場を提供することも視野に入れているとのこと。

そして、これらの施策を通じ、「実物標本・資料を有する博物館だからこそ可能な新しいサービス提供、そして標本・資料の新たな活用、価値の創造を目指し、今後も積極的に発信していきます」とコメントしています。

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投稿者プロフィール

大島 予章
大島 予章
ウェブコンテンツ業界20年。酸いも甘いも経験したと思った矢先、業界のさらなる巨大さと深さを知り日々挑戦する爆走社長です。趣味:筋トレ・ゲーム・株式投資。
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