エルメス、勝手につくられたNFT「メタバーキンズ」問題で勝訴

フランスのファッションブランド「エルメス(HERMES)」が、アーティストのメイソン・ロスチャイルド氏によるエルメスの「バーキン」を模したバッグをベースにしたアートNFTプロジェクト「メタバーキンズ(MetaBirkins)」の商標権侵害をめぐる裁判で勝訴したことを複数の海外メディアが報道しました。

エルメスは、馬具職人のティエリー・エルメス氏が1837年に設立したフランスのファッションブランドです。バッグなどのレザーアクセサリーを中心に、メンズおよびウィメンズウェア、ジュエリー、時計、フレグランスと幅広く展開しています。

またメタバーキンズは、メイソン・ロスチャイルド氏が2021年に立ち上げたNFTプロジェクトです。エルメスを代表するアイテム「バーキン」を模したバッグをベースに、マンモスの牙や映画『グリンチ』に登場するキャラクターであるグリンチの緑色の毛皮、ゴッホの作品「星月夜」をあしらったものなど、さまざまなデザインを展開していました。

同氏はこれまでに、NFTマーケットプレイスのOpenSeaで約100点のメタバーキンズを1点450ドル(記事執筆時のレートで約6万円)で販売したほか、二次流通の7.5%を受け取っていたことから、約12万5,000ドル(約1,670万円)の利益を得たとされています。

これに対し、エルメスは消費者の混乱を招くことを危惧し、2021年1月にメイソン・ロスチャイルド氏を提訴。訴状の中で同氏が「一般名称であるメタ(meta)を足すことでエルメスのバーキンという著名な商標を略奪し、一攫千金を狙っている」と述べています。さらに「Build-a-MetaBirkin(メタバーキンを作ってみよう)コンテストでメタバーキンズを作るよう他者を奨励した。これはバーキンの商標をより一層希釈し、さらなる損害を与えている」とも主張しています。

約1年にわたっておこなわれた提訴は、デジタル資産そのものの性質を精査するものとして注目を集め、NFTは商品なのか、それともアメリカ合衆国憲法修正第1条によって保護される芸術作品なのかが争点となっていました。

海外メディアの報道によると、ニューヨーク・マンハッタン連邦地方裁判所の陪審員はメタバーキンズについて、芸術作品とは言えないため商標法を適用するべきと判断したとのこと。メイソン・ロスチャイルド氏の商標権侵害を認め、総額13万3,000ドル(約1,780万円)の損害賠償を命じました。

裁判の結果を受け、同氏は「メタバーキンはアートだ」と主張。自身のTwitterで「今、路上で通行人を9人捕まえて、アートとは何かと尋ねる。そこで返ってきた答えが議論の余地のない真実となってしまう。それが今日起きたことだ。数十億ドル規模のファッション企業が、アートやアーティストを“大切にする”と言いながら、アーティストが何を作ったかではなく、履歴書や出身校を見て“芸術とは何か、誰が芸術家であるか”を選択する権利があると思っている。それが今日起きたことだ」と批判的なコメントをツイートしています。

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大島 予章
大島 予章
ウェブコンテンツ業界20年。酸いも甘いも経験したと思った矢先、業界のさらなる巨大さと深さを知り日々挑戦する爆走社長です。趣味:筋トレ・ゲーム・株式投資。
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