Epics DAO、オープンソースソフト開発者向け助成金プロジェクト開始

Epics DAOは、オープンソースソフトウェア開発という分野が抱えている深刻なリソース不足の問題を解消するため、助成金プロジェクトを開始したと発表しました。

Epics DAOは、オープンソースソフトウェア開発のための分散型クラウドソーシングプラットフォーム「Epics」から生まれたDAO(分散型自律組織)。このEpicsを立ち上げたのは、ブロックチェーンを活用したソフトウェア開発を手がけている「エルソウルラボ(エルソウル アムステルダム研究所)」で、オランダ政府から先端研究開発プロジェクトとして認定を受けています。

今回、Epics DAOがこの助成金プロジェクトを開始した背景には、オープンソースソフトウェアの開発者たちが抱えている課題があります。その代表的なものが、JavaScriptでの開発を陰で支えている「core-js」の事例です。

core-jsはオープンソースのJavaScriptライブラリ。旧バージョンのブラウザでもJavaScriptの最新機能を使えるようにする機能を果たしており、世界中の人に活用されています。その規模は、月間のダウンロード数が2億5,000万回という膨大なもの。リリースされた2014年からの合計ダウンロード数も90億回に達しており、この数字だけでも重要性の高さが分かります。

ただ、ユーザーの多くは間接的にcore-jsを利用しており、自身の開発プロセスにおいてcore-jsがどれだけ多くの恩恵をもたらしているかということについて意識する機会は、ほぼありません。その反面、core-jsの開発者はこうした貢献に見合ったプロフィットを得ることができておらず、開発を続ける中でも適切な資金を得られていません。

事実、core-jsを生み出したDenis Pushkarev(zloirock)氏は、ユーザーのニーズとテクノロジー環境の変化に対応するため、元々従事していたフルタイムの仕事を辞し、収入を大幅に減らしてでもサービスを続けようと努力していますが、それも非常に危うい状況です。

ちなみに現在、zloirock氏がcore-jsの開発・保守に費やしている作業を時給に換算すると、僅か200円程度にしかならず、同氏の生活はひっ迫。そうした窮状を訴えてはいますが、適切な援助も受けられていないのが現状です。

類似の事例は他にもあるため、こうした課題を解決しようとEpics DAOが立ち上げたのが今回のプログラム。オープンソースソフトウェアの開発者を資金面で援助し、リソース不足解消に少しでも貢献するのが目的だとしています。

この取り組みで対象となったプロジェクトは、助成金(EPCT)を利用して、GitHubのissueに対する懸賞金クエストを作成することが可能。この仕組みの活用で、より多くの開発リソースを集められるようになります。

善意で技術や知見を提供しているのにも関わらず、報われないオープンソースソフトウェアの開発者たち。こうした取り組みが軌道に乗ることで、彼らが安定した生活を送れるようになり、世の中の意識にも変化が起き始めるのが理想的だといえるでしょう。

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投稿者プロフィール

大島 予章
大島 予章
ウェブコンテンツ業界20年。酸いも甘いも経験したと思った矢先、業界のさらなる巨大さと深さを知り日々挑戦する爆走社長です。趣味:筋トレ・ゲーム・株式投資。
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