教えて!偉い人!【女子大生の社長訪問日記】
経済産業省の調べによると、日本のIT業界は数年後に深刻な人手不足に陥ると言われています。
全世界でデジタルの時代に突入しているにも関わらず、日本は国内にIT開発ができる人材が不足しており、海外に遅れを取っている状況です。
一方で子どもたちが選ぶ『将来なりたい職業ランキング』ではエンジニアは上位に選ばれるほどだそうです。
そのギャップはどのように生まれているのでしょうか?
国内エンジニア不足の危機を救うべく、起業された社長さんにインタビューさせていただきました!
AIがどこまで人々の仕事を奪うのかと言われている時代に、唯一無二の人間になるためにはどうしたら良いのでしょうか?
このシリーズでは現役就活生の私が現役社長の方々を訪問し、インタビュー形式で社長さんの人生やキャリアの選択方法について語っていただきました。
働き方改革と緊急事態宣言で変わったことはなんですか?
今後の就活生はどこを見て会社を選んだらいいの?
今世紀最大の就活氷河期を生き抜いた私が聞きたかったことをズバズバ聞いてきました。
就活生の皆様、ぜひ参考にしてみてください。
編集担当:たまご
インタビュー日時:2021年10月
『人をつくる』毎日違う選択ができたら幸せになれる
今回インタビューさせていただいたのはアルサーガパートナーズ株式会社の小俣泰明(おまたたいめい)社長。
小さい頃は漫画家を目指し、漫画の専門学校に進学。
その後、独自で作曲も、DJも、デザインもゲーム制作も行ってしまう芸術のセンスを幅広く持ち合わせた方です。
アルサーガパートナーズは『営業体制を持たない180人規模のエンジニア集団』です。
ワンストップ型のIT開発企業
たまご:最初に略歴を簡単に教えて下さい。
小俣さん:専門学校を卒業後、日本ヒューレット・パッカードやNTTコミュニケーションズなどの大手ITベンダーで技術職を担当し、システム運用やネットワーク構築などのノウハウを習得しました。
小俣さん:その後、2009年にソーシャルゲーム開発において業界トップクラスであり、東証JASDAQに上場の大手IT企業(クルーズ株式会社)に参画し、 同年6月に取締役に就任しました。
小俣さん:翌年5月同社技術統括担当執行役員に就任。 CTOとして大規模Webサービスの開発に携わりました。2012年6月に退任して2012年からITベンチャー企業を創業。 代表として3年で180名規模の会社にしました。
小俣さん:2015年に社長を辞任して2016年ITサービス戦略開発会社アルサーガパートナーズ株式会社を設立し、今に至ります。
たまご:御社の前にも1社起業されているんですね。まずは御社の事業内容を教えて下さい。公式ホームページに『ワンストップ型ITシステム開発事業』と記載されていたのですが、これはどういう意味なのでしょうか?
小俣さん:IT事業開発の上流(戦略構築)~下流工程(開発)まで一貫して受けられる体制という意味です。「ワンストップ」とはもともと、『1か所でさまざまな用事が足りる、何でも揃う』という意味です。
小俣さん:一般的に大規模なITシステムをつくろうとしたとき、IT業界では分業体制が取られます。システムインテグレータと呼ばれる元請けの会社がシステムの要件を決め、その外注先として、Web開発が得意な会社、裏側のシステムを作るのが得意な会社、デザインが得意な会社がそれぞれの仕事をします。
小俣さん:当社はこうした分業体制とは反対に、IT開発に必要な体制を自社内に全て備えています。この体制によって『多重下請け構造問題』を解決しようとしています。
たまご:『多重下請け構造問題』とはなんでしょうか。
小俣さん:IT業界では一番上にシステムインテグレータと呼ばれる会社がいて、ITの設計をする会社があって、プログラミングをする人がいる。これってたとえばもともと1億円の案件だったとすると、最も上流のシステムインテグレータが5,000万円引いて、下請け企業が3,000万円引いて、二次受けのプログラミングをした人には2,000万円しか残らないということが起こります。
たまご:なるほど。間に介している会社が多いほど、最後に残るエンジニアがもらえる報酬は低くなるということですね。
小俣さん:そうです。ということは、一社でこのすべてを請け負うことができたらクライアントも同じ案件でも1億円も払う必要がなくなる。そしてエンジニアがもらえる報酬ももっと多くなる。
たまご:どちらもWin-Winの関係になれるということですね!
小俣さん:それにいろんなところを介するよりもスピード感が上がり、エンジニアの意見を直接お客さまにお伝えすることで、より良いプロダクトを作ることができます。コミュニケーションが加速することで、エンジニアにとって働きがいのある会社ができますよね。
たまご:案件発足からクライアントの元に届くまでの時間短縮にもなるんですね。
日本はIT人材不足の危機!!
たまご:御社のアピールポイントを教えて下さい。
小俣さん:1つ目は社内で一貫して開発できる体制が整っていることで、2つ目は情熱の高い未経験エンジニアを多く採用していることです。これに関しては国内IT人材不足への対応として行っております。
たまご:国内IT人材不足というのは先日インタビューさせていただいたエンジニアの方からも聞いたことがあります。小俣さんが日本のITの人材不足について危機感を抱いたきっかけは何かありますか?
小俣さん:そもそも経済産業省が2019年に調査した報告書によると、日本の少子化に伴うIT人材不足は社会課題として早急に対応しなければならない問題として取り上げられています。
小俣さん:現在のIT人材の需要と供給の調査によると、需要と供給のギャップは2030年には70万人を超えると予測されています。極度のIT人材不足に陥るということです。それに対応するために国内のIT人材の育成に力を入れていかなければならないのです。
小俣さん:一方で、ある調査では中高生の将来なりたい職業ランキングにITエンジニア・プログラマーが上位に選ばれています。
小俣さん:しかし日本では、トップクラスのエンジニアが育ちにくい状況になってしまっています。
海外に開発を外注しすぎた結果…
小俣さん:その理由は多重下請構造に加え、オフショア開発にあります。
小俣さん:近年IT業界では開発業務をベトナムや中国など低賃金で労働者を雇える国に外注し、開発コストを下げる動きがあるんです。これが行き過ぎた結果、日本国内でスキルの高いエンジニアを受け入れたり、育成できる環境が少ないんです。
たまご:賃金が安い労働者というのはどちらかと言うと、体力勝負の仕事のイメージでした。頭脳派の仕事も中国や東南アジアに投げていたんですね。
小俣さん:あっちの方がそもそも物価が安いですから。たとえばベトナムなら、エンジニアを1人雇うにしてもきちんと仕事ができるエンジニアが1人あたり月10万強で雇えます。
たまご:月10万強?!日本の約2分の1ですね…。それで海外のエンジニアのレベルが気づかないうちに上がりすぎてしまったんですね。
小俣さん:だから日本でプログラマーになりたい場合は、二次受け、三次請けの企業に入り多重下請構造の下請けになるか、本気で上を目指したい場合は、アメリカなどのIT先進国に移住し技術を磨き続けるしかなくなってしまうんです。
小俣さん:この状況が当たり前になっているのって、将来プログラマーになりたいと思っている日本の子どもたちにとっても日本の経済にとっても良くない状況です。IT産業以外、製造業などがこれまで直面してきた、日本経済の空洞化の歴史を繰り返すことになります。
たまご:そうですね。どんどん海外に置いていかれてしまいますね。
小俣さん:だから僕は自分の会社をエンジニア業務のすべてを日本国内で担える会社にしたいと思っています。これは大きな賭けでもあります。
たまご:日本が海外にIT開発を外注していたという話は知らなかったです。
学生時代はバンド仲間を集めるためのマッチングサイトを作成
たまご:次に小俣さんの人生について教えて下さい。学生時代は何をしていましたか?
小俣さん:小さい頃から漫画家になりたくて、漫画の専門学校に入学しました。親からはめちゃくちゃ怒られましたが(笑)
たまご:本格的に漫画家を目指してらっしゃったんですね。小俣さんのFacebookページを拝見したときに、DJ経験もあり、作曲経験もあり、最終目標は漫画家というとても芸術性豊かなご経歴だなと感じました。音楽に関しては学生時代から興味があったのでしょうか?
小俣さん:作曲は昔からやっていました。iTunesで今でも聞けるやつもあるんですけど。
たまご:発売されたこともあるんですね!
小俣さん:ありますよ。将来は中田ヤスタカさんみたいになりたかった時期もあったんですけど、それは叶いませんでした。
たまご:作曲をしているというのはITのような機械をいじるのが小さい頃から趣味として好きで、それがIT業界に導いてくれたという感じなのでしょうか?
小俣さん:僕が小さい頃はまだパソコンが出始めたくらいの時期でしたが、僕にとってパソコンは目的を達成するためのツールでした。だから必然的に詳しくもなっていきましたね。
小俣さん:バンドマンになりたかった時期もあって、自分たちで音楽仲間を集めようと、募集サイトを作ったこともありました。
小俣さん:会員登録した人は音楽性や性格が合いそうなメンバーを探すことができます。
たまご:バンドをやりたい人達が会員登録して最高のバンド仲間を見つけるサイトということですね!音楽業界を目指す若者たちが集まる場所になっていたんですね。
たまご:次にご自身のファーストキャリアを決めたときの就活エピソードを聞かせてください。
小俣さん:ファーストキャリアは業務委託で大手企業のサーバーシステムを担当していました。
たまご:最初は業務委託だったんですね。
小俣さん:この仕事は24時間365日の仕事だったので、夜間勤務ができたんです。当時はDJや作曲もしていたので、夜勤の方が都合が良かったんですよね。最初に入った会社でITやサーバー、インフラの知識・ノウハウはかなり身につきました。
たまご:起業したいと思ったきっかけはなんですか?
小俣さん:独立する前に勤めていた会社では入社後3ヶ月で取締役になりました。それが会社の中でナンバー3くらいの立場だったんですけど、それより上だったり、その会社の社長だったりになろうとすると社長が持っている大量の株式を買い取らなければなりません。
小俣さん:この会社でこれより上に行くのは無理だなと思ったときに、自分で起業するしか方法がなかったんですよね。
たまご:では昔から将来起業したいなと思っていたわけではないんですね。
小俣さん:全然起業するなんて思っていなかったです。
国産で投資家たちに認められるIT上場会社を作りたい
たまご:小俣さんの最終目標は漫画家ということでしたが、それも含めて、今後やってみたいことや未来予想図がありましたら教えて下さい。
小俣さん:小さい頃は漫画家になりたかったり、バンドマンになりたかったりして、でもどれも才能がないと諦めてしまったので遠回りしてきた人生だなと思います。
小俣さん:今の目標は弊社を上場させて、国産でオフショアを使わないIT企業を作りたいと思っています。
たまご:国産ですか?
小俣さん:今上場しているITの会社ってほとんどが東南アジアや中国に開発を外注しているオフショア開発の会社です。だから社内のエンジニアを育てながら、すべて完結できるIT会社として、投資家の皆様に支持される会社を作りたいと思っています。
小俣さん:もちろん最終目標は漫画家ですよ。将来的には漫画を描きたいと思っています。
たまご:今の小俣さんの肩書があるからこそ成功することもあると思います。才能があっても世の中に見つけてもらえないことがほとんどですから、今後の漫画や音楽の発売楽しみにしています!
ベンチャーで成功している社長さんと対等に話ができる環境にいられることが幸せ
たまご:小俣さんが起業された会社は御社で2社目ですよね。1社目も3年で180名まで規模を大きくして、御社も現在7年目にして180名を超えているとお聞きしました。
たまご:それってベンチャー企業としてはすごく速いスピードだなと思います。人数を増やすためには面接をたくさんするのはもちろん会社の資金やサービス内容も大規模にしていかなければならないと思います。そのスピード感で会社を大きくしていくことができた秘訣などはありますか?
小俣さん:独立する前からITベンチャーの経営者界隈と交流させていただいてました。独立当初はいろんな社長さんにお世話になりましたね。
たまご:やはり独立するとなるとそれまでに培ってきた人脈が大切なんですね。
たまご:特に影響を受けた方などはいらっしゃいますか?
小俣さん:特定の方ではなく、ベンチャーで成功している社長さん、そういう方々と対等に話ができる環境にいられることが幸せだなと思います。日々の会話がとても刺激になっています。
たまご:経営者の方同士が話しているのを見るとどんどんアイディアが膨らんでいく様子がすごく面白そうだなと思います。
意識的に違う選択をしてみると幸せになれる
たまご:最後に今の就活生へのメッセージをお願いします。
小俣さん:毎日頭を使って、今日はどこに頭を使ったかを振り返ってみてください。
小俣さん:僕の会社のビジョンが『人をつくる だから 物をつくれる』というものなんです。この言葉には『人間をロボットにしない』という意味が込められています。人をつくるというのは『自分自身の存在価値を疑う者をなくすため』でもあります。
小俣さん:人をロボットにさせてはならないんです。たとえば僕がたまごさんに『こんにちは』と言ったら『こんにちは』と返しますよね。でも明日は違う言葉を返すかもしれません。人間は本来そういう風になっているんです。
小俣さん:でも、決められたルーティン作業だけに従って仕事をしていると、人は思考を止めてしまい、毎日同じルーティンで同じ言葉しか返さないような状況もありえます。
小俣さん:頭を使わなくても生きられる世の中になってしまっているからです。
たまご:たしかにそうかもしれないです。世の中が便利になっていくにつれてあまり頭を日々使わなくなったのはあると思います。予測変換で漢字を読めるけれど書けなくなったり、『か』と打ったら『かしこまりました』とか、『あ』と打って『ありがとうございます』と出たり。考えなくてもこれでいいかとなってしまっていると思います。
小俣さん:それって人型ロボットと話しているのと同じです。ロボットとずっと話していたらきっと飽きますよね?
たまご:飽きちゃいますね。
小俣さん:決まった答えだけを返し続けていると、人間は魅力的じゃなくなる。進化していく人こそ面白いんです!
小俣さん:僕はそういう人を育てていきたいと思っています。だから『頭を使う状態をどうつくるか』を日々考えていますね。
たまご:なるほど。日々頭を使える人をつくるということですね。
小俣さん:意識的に毎日違う選択をすると幸せになれると思います。通勤途中に違う道を通ってみたり、話したことがない人と話してみたり。どのタイミングで自分はどうしてこの選択をしたのだろうと、毎日振り返ってみるんです。そうすることで毎日が記憶に残る日になります。
小俣さん:何も判断せず、いつもと同じことしかしなかった日は記憶に残りません。そうすると時が経つのは早いなと感じてしまうんです。
たまご:日々考えながら生きていたら毎日が充実した日になって、忙しかったけど濃かったな、長かったなと感じるようになるんですね。その方が人生得した気持ちになりますね!
アルサーガパートナーズ株式会社 会社概要
会社公式ページ | https://www.arsaga.jp/ |
採用
ポテンシャルメンバー | 自分で作成した成果物の提出必須。 ジャンル・年齢不問。 |
上流工程SE | ・サーバサイドアプリケーション開発実績3年以上 →弊社使用言語・フレームワークでの実績であれば尚可 ・リードエンジニアのご経験がある方(実施的にリードエンジニアでも可) ・Gitによるバージョン管理が行えること ・CIツール(CircleCI・TravisCIなど)を用いたテスト自動化の構築経験 ・Dockerを用いた開発環境構築経験 ・CIツールやデプロイツール、シェルスクリプトなどを用いたデプロイ自動化の構築 |
プロジェクトマネージャー | ・サーバサイドアプリケーション開発実績がある ・チームをまとめてプロジェクトを進めた経験がある |
IT開発ディレクター | webサイト、アプリ開発実務経験1年 サイト設計 デザイン、プログラミング基礎知識 プロジェクトマネジメント業務 コミュニケーションマネジメント チームビルディング |
お仕事のご依頼・ご相談
編集後記
私は小俣さんの会社のビジョンに強く共感しました。
『自分自身の存在価値を疑う者をなくす』というのは多くの人々の共感を呼ぶだろうなと感じました。
個人の性格によって感じ方は異なるかも知れませんが、私は毎日違う仕事に挑戦したいし、毎日違う人と会いたいし、毎日新しい知識を身に着けたいと思っています。
その方がワクワクして自分が日々確実に成長していると実感できるからです。
私じゃなくてもいい、代わりが利く人間になってしまったら私はきっと死にたくなると思います。
誰かに必要とされていると感じられるためには自分が日々考え続けないといけません。
小俣さんは会社を短期間で大きくできた理由をたくさんの社長さんに支えてもらったと仰っていましたが、小俣さんが日々頭を動かして、充実した日々を過ごしているからこそ、魅力がオーラとなって周りの人を巻き込んでいっているんだろうなと感じました。
私もそんな影響力のある人になれるように、日々魅力を増していける経験を積みたいと思いました。
投稿者プロフィール
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恵比寿から港区女子を夢見てライターの仕事をしている新卒OLです。
夜景とイルミネーションが好きで、いつかタワーマンションに住んで都会の夜景を独り占めしたいと思っています。
インスタでハッシュタグ「豪邸」で調べることと、お風呂上りにベランダでオレンジビールを飲むことと、おいしいボンボンショコラを一日一個ずつ食べることと、ミルクティーを飲みながら読書をすることが好きです。
よろしくお願いします。