ESG投資と人的資本:持続的な成長への道

ESG投資と人の資本の関係は、企業が社会的責任を果たし、持続可能な成長を追求することで密接に結びついています。ESG投資の普及とともに、企業の財務以外の情報が重視され、人的資本にも注目が集まっています。

2020年に米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して人的資本情報の開示を義務付ける規定を設けたことで、人的資本情報の開示に対する要求が加速しています。

内閣府と経済産業省は人的資本に関する研究会を推進し、2021年に改定された企業ガバナンスのガイドラインに人的資本の項目を追加しました。国内では、企業の経営戦略において人的資本の重要性に対する認識も広がっています。

ESGの基礎知識についてはコチラ→

目次

経営者の目線でESG投資は

ESG投資は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する投資アプローチです。企業が環境への配慮、社会的な側面、および良いガバナンスを実践することで、投資家やステークホルダーからの信頼を獲得しやすくなります。信頼性のある企業イメージは、人の資本を集める魅力的な要素となります。

ESG投資には社会的な側面が含まれているため、企業が従業員の幸福度や働きやすさ、多様性と包摂性の向上に取り組むことが重要となります。従業員は企業の重要な資産であり、彼らが満足して働くことで企業の生産性や創造性が向上します。ESGに配慮する企業は、従業員を大切にし、働きやすい環境を提供することで、人の資本を育み、優秀な人材を引き寄せることにも貢献します。

企業のガバナンスの向上を求めます。適切なガバナンスの実践は、企業内の透明性と責任を高め、不正行為や汚職などのリスクを低減します。このような健全な経営体制は、投資家や従業員、顧客などに対して信頼感を醸成し、企業の成長と持続可能性を支援します。

ESG投資は企業が社会的責任を果たし、環境・社会・ガバナンスの向上に努めることで、人の資本の育成や企業価値の向上に寄与する重要な要素となっています。

ESG経営とは→

人の資本とは

人的能力や才能を「物質」「金銭」などの資本と同等に見なす経済学の用語を「人の資本(じんてきしほん)」といいます。具体的には、個人が持つ能力、才能、スキル、資格、資質など、価値を創造できる資本を指します。

近年、企業の市場価値を構成する要素として、有形資産である物品や金銭よりも無形資産である知的財産権などの割合が高まっています。人が持つ能力や才能は企業の知識資産となり、企業の価値と競争力と直接的に関連しており、このような視点が特に多国籍企業を中心に広まっています。

人の資源(ヒューマンリソース)と比較すると、リソースは使用することで減少してしまいますが、資本は投資によってリターンを得ることができます。企業にとって、人材は単なるコストではなく、企業価値と持続的成長に貢献するという考え方です。

人の資本、開示指針が明らかに

世界では人的資本の情報開示の義務化が進み、日本でも2023年3月期決算から、上場企業などを対象に人的資本の情報開示が義務化されました。

政府の指導方針では、人的資本に関して、日本企業が公開を希望する具体的な項目案を整理しています(表)。これらの内容は、上述の標準と指針に掲載された項目を包括的に収集しています。表に示されているのは公開される項目の例であり、企業は必ずしも全てを公開する必要はありません。[表:人的資本の公開項目例]

項目公開例
人材配置部門別の人材配置と人員の変動の公開
育成教育・研修プログラムの実施状況と参加者数の公開
多様性女性管理職の割合とその増加傾向の公開
ワークライフバランス育児・介護休暇の取得率と復職率の公開
キャリア開発キャリアパスと昇進の基準とプロセスの公開
働きがい従業員満足度調査結果と改善策の公開
インクルージョンダイバーシティイニシアティブとその効果の公開
出所:内閣官房「人的資本可視化指針(案)」を基にアルク編集部が作成

以上のような情報は、企業の持続可能な経営やステークホルダーとの信頼関係を築く上で重要な要素となります。企業は自らの特性や目指す方針に合わせて、適切な内容を公開していくことが求められるでしょう。

人への投資促進の助成金

日本政府は人材育成や人への投資を促進するために、様々な助成金制度を提供しています。企業や団体が人材育成や人への投資を積極的に行うことを後押しし、より良い人材環境や労働市場の形成を促進することを目的としています。

様々な助成金の中で、人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です

人材開発支援助成金全部のコース一覧

■人材育成支援コース

■教育訓練休暇等付与コース

■人への投資促進コース

■事業展開等リスキリング支援コース

■建設労働者認定訓練コース

■建設労働者技能実習コース

■障害者職業能力開発コース

厚生労働省人材開発支援助成金→

助成金の詳細や応募条件は、各制度によって異なるため、具体的な情報は日本政府のウェブサイトや関連機関にて確認することをおすすめします。

ESG投資と人の資本は密接に関連

ESG投資は、環境、社会、ガバナンスの要素を重視する投資アプローチであり、企業の社会的責任と持続可能性を評価する際に、人的資本も重要な要素として考慮されます。

企業における人的な能力や資源を指し、従業員の知識、スキル、経験、能力などが含まれます。人的資本への投資は社会的な影響を持ちます。教育プログラムや多様性の促進など、従業員のスキルアップや満足度向上は社会に対するポジティブな影響となります。

従業員の権利を尊重し、公正な労働条件を提供すること、企業の適切なガバナンスはESG投資の評価に重要です。ESGに重点を置く企業は、従業員の成長機会を提供し、優秀な人材を確保・育成することで競争力を高め、企業の生産性やイノベーション力を向上させます。

人への投資促進は、ESG投資の観点からも重要です。企業が従業員に対して適切な環境や成長機会を提供することで、持続可能な成長や社会的責任を果たす企業として評価される可能性が高まります。政府の助成金や支援制度も、人への投資を促進するための重要な手段となります。

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