教えて!偉い人!【女子大生の社長訪問日記】
家を借りるときに敷金っていらないなと思ったことありませんか?
賃貸マンションの敷金は1、2ヶ月分が相場ですが、法人に貸すテナントになると相場は賃料の約12ヶ月分にもなります!
常時30名程度が出社できるオフィスを都内に借りるとしたら、オフィスを移転するだけで約1,000万円がかかるという計算です。
敷金・保証金のシステムは世界では珍しく、日本には現在何十兆もの敷金・保証金として動かせないで眠っているお金があるそうです。
それってとても日本の経済を停滞させている大きな原因の一つなのではないでしょうか…?
このシリーズでは現役就活生の私が現役社長の方々を訪問し、インタビュー形式で社長さんの人生やキャリアの選択方法について語っていただきました。
働き方改革と緊急事態宣言で変わったことはなんですか?
今後の就活生はどこを見て会社を選んだらいいの?
今世紀最大の就活氷河期を生き抜いた私が聞きたかったことをズバズバ聞いてきました。
就活生の皆様、ぜひ参考にしてみてください。
編集担当:たまご
インタビュー日時:2022年2月
敷金制度はもう古い?!日本に眠っているお金を掘り起こそう
今回インタビューさせていただいたのは株式会社日商保の豊岡順也社長。
日商保は企業がオフィスを借りる際に預けなくてはいけない敷金・保証金を一部または全額削減できるサービスを行っています。
多くの企業にとってオフィスや店舗の敷金・保証金は総資産の何十%もを占めています。
そのお金を事業成長に回して欲しいという想いでこのサービスを開始されました。
核兵器にも勝る抑止力『経済安全保障論』
たまご:最初に豊岡さんの略歴を教えて下さい。
豊岡さん:大学卒業後証券会社へ入社、その後、父親が病気で倒れたため最初に入社した証券会社を辞めて父親の会社へ入社しました。父の会社を辞めてから再度証券会社に転職し、そこで上場企業との合弁会社で社長に就任します。その会社をMBOし、さらにその会社を売却して10年前に今の会社日商保を創業いたしました。
たまご:ファーストキャリアは金融業界だったんですね。証券会社に入社するまでの就活事情を教えて下さい。
豊岡さん:大学生時代、最初は安全保障に興味があって国政政治学の勉強をしていました。そこで今はよく耳にする言葉である『経済安全保障論』を知りました。実はこれは30年前から言われていたんです。
たまご:経済安全保障論を簡単に説明するとしたらどのようなものなのでしょうか?
豊岡さん:現在(インタビュー日時2022年2月)もロシアのウクライナ侵攻で戦争がまた始まるのではないかと騒がれていますが、経済安全保障論は戦争に対して核兵器などの武力による抑止ではなく、経済や金融で戦争を抑止するという考え方です。
豊岡さん:例えば、バスケット取引という方法があって、このバスケットとはパンを入れるバスケットに由来していますが、当時の日本はバブル真っ只中で世界で一番の債権国だったんです。100兆円を各国に債権として貸し付けて、日本はそれを裏付けにしてドルやポンドやマルクを借り入れしていました。
豊岡さん:一つのバスケットの中にあるお金は為替が変わっても価値は一緒です。そのような債権国であったとしたら、仮に他国がミサイルを打つぞと脅してきても、債務国であるアメリカ・イギリス・ドイツは日本の味方をしてくれます。
たまご:なるほど!お金を貸し借りしている経済的な繋がりがある国は守ってくれるということですね。敵になったら絶対お金貸してくれないですもんね。それが経済的な抑止力ですね。瀬戸際外交よりかなり良心的ですね。
豊岡さん:債権といっても利権を取るのではなく、あくまで友好的に事業に投資するというカタチなので日本に対してはポジティブな印象しか持たれません。
豊岡さん:金融が核兵器よりも強い対抗策になると知り、それなら金融の知識を身に着けようと考え、金融の勉強をはじめました。
敷金・保証金を現金化 日商保の敷金削減サービス
たまご:御社のサービス内容を教えて下さい。
豊岡さん:企業が事務所や店舗を借りる際に不動産オーナーに預けなくてはならない敷金・保証金を削減できるサービスを展開しております。
豊岡さん:このサービスのメリットは企業としては本来預けるはずの敷金を預けなくて済むのでその資金が活用できる点、不動産オーナーとしては敷金が少なくなることで他の不動産オーナーの物件との差別化でき、削減した金額と同額の保証を弊社が提供することでリスクなく安心して敷金を少なくできる点です!
たまご:敷金を削減できる保証サービスなんて初めて聞きました。御社のアピールポイントはどこですか?
豊岡さん:弊社は『本業を助ける金融』を企業理念として展開しています。本業を助ける金融の一例として世界一の自動車会社になったGM(ゼネラルモーターズ)があります。
豊岡さん:当時自動車購入代金は一括で支払っていましたが、GMの子会社が自動車ローンを世界ではじめてつくったことで一般大衆の人も自動車を購入しやすくなり、販売台数が大きく増えて世界一になりました。自動車ローンという新しい金融サービスによって多くの人が自動車を購入しやすくなり、GMが大きく成長する要因となったのです。
豊岡さん:同じように弊社のサービスは敷金や保証金という商慣習を、弊社が敷金に代わる保証を不動産オーナーに提供することで変えていける新しいサービスであること、サービスを利用する企業は敷金を預けずにすみ、その分の資金を本業に使えることで本業がより成長できる画期的なサービスであること、そこが最大のアピールポイントです!
どうして赤の他人にそんな大金を預けているんだ!クレイジーだよ!
たまご:このサービスを始めようと思ったきっかけは何ですか?
豊岡さん:証券会社勤務時代に大手ハンバーガーチェーン店から『総資産の3分の1を店舗物件の保証金として眠らせているから、それらを返還してもらって事業を回すのに使いたい』という相談を受けたことがきっかけでした。
たまご:総資産の3分の1もですか?!
豊岡さん:店舗を複数持っている飲食店などでは3分の1になることもあります。一般の会社で敷金が総資産の3分の1を占めることはなかなかないと思いますが。
豊岡さん:その時ちょうど創業者の方が亡くなったタイミングで、アメリカから役員の人が日本の店舗を取り仕切るために来ていたんです。アメリカって敷金の制度がないんですよね。それでその方が「どうして赤の他人にそんな大金を預けているんだ!クレイジーだよ!」という話になったんです。
たまご:アメリカに敷金の制度はないんですね!
豊岡さん:敷金の制度は海外にはほとんどない、日本特有の制度なんですよ。これは日本が簡単に入居者を追い出すことができない法律になっていることが理由なんですが、アメリカなどは居住していても未払いがあればすぐに住人を追い出せますよね。
たまご:アメリカのドラマで追い出されるシーンよく出てきますね(笑)
豊岡さん:日本には借地借家法というのがあって、3回くらい賃料を滞納しないと合法的に追い出すことはできないため、未払いが長期化するリスクがあります。また、借家を返すときに『原状回復義務』があります。
たまご:借りたものは借りたときの状態に戻して返さなくてはいけないということですね。
豊岡さん:2か月3か月賃料を払えない人が原状回復をするためのお金を払えるかは怪しいですよね。そこで最初に預けていた敷金を原状回復費用に充てるということです。
たまご:なるほど。日本は借りている側は突然追い出されることがない分、貸している側は未払いの賃料が残ったり、家をぐちゃぐちゃのまま返されたりする心配がないよう敷金という商習慣があるということなんですね。
独自の財務診断システムで3年以内の倒産可能性を診断
たまご:先程お話に出たハンバーガーチェーン店の場合は店舗の敷金が総資産の3分の1とのことでしたが、法人にとってオフィスの敷金・保証金というのはどのくらいの重荷なのでしょうか?
豊岡さん:スタートアップなどの成長企業だとかなりの重荷になっています。
たまご:御社のサービスは、企業の連帯保証人になるというサービスだと思うのですが、クライアント企業を間違えるとトラブルに巻き込まれかねないのではないかなと思いました。借り手として保証してもらえる企業になるための制限・審査はどのように行っているのでしょうか?
豊岡さん:独自の財務診断システムを構築しており、企業の直近の財務データを打ち込んで3年以内に倒産しない会社かどうかを判断しています。
たまご:そんな有能なシステムがあるんですね。その審査の突破率はどのくらいですか?
豊岡さん:8割程度が合格しています。今オフィスを借りようとしている企業はどこもビジネスに対して前向きで勢いのある企業がほとんどです。いままでもありがたいことにトラブルに巻き込まれたことはありません。
たまご:審査の精度が高いんですね。
豊岡さん:弊社は法人にしか提供しないということと、危なくない会社にしか提供しないというルールを徹底しているのでうまくいっています。成長企業が資金を有効活用するために利用してもらう保証サービスですので。
不動産オーナーを納得させるまで4年半…
たまご:御社が創業を始めたときには不動産会社からすると敷金を預かるというのはその企業の信用力を証明する道具のようなものだったと思います。そのイメージが強く染み付いている不動産業界で御社のサービスを浸透させるのは難しかったのではないでしょうか?
豊岡さん:おっしゃる通り難しかったです。不動産業界は保守的な人が多く、実績のないサービスを活用してくれる人を見つけるのは大変でした。
豊岡さん:当時は不動産オーナーからしたら敷金を減らしたい、あるいは返して欲しいなんて言語道断。敷金を預ける資金力がないと判断されてしまいます。だから弊社のサービスを信用してもらうまでには4年半ほどかかりました。
たまご:4年半?!すごい努力ですね。
豊岡さん:ただ他社で実績があれば他の不動産オーナーもサービスを取り入れてくれるようになりました。その1件目を取るまでが一番大変でしたね。
コロナ禍で東京の空室率は2%→6.3%に!
たまご:私は不動産仲介サイトで賃貸マンションを見るのが好きなのですが、敷金がゼロのところもあれば、都内のタワーマンションだと敷金・礼金合わせて4か月分のところもありますよね。法人が借りるオフィスだと賃料の12ヶ月分が相場だと聞きます。敷金はどのように決まっているのでしょうか?上限などはありますか?
豊岡さん:上限はありません。ここ1年は空室が増えているので敷金を値下げしている物件も多いですね。私が驚いたのは北海道でオフィスなのに敷金が1、2ヶ月分のところがありました。敷金の額は物件の競争力によって変わってきます。
たまご:競争力によって変わってくるんですね。働き方も今後変わってくるでしょうから敷金の相場も変わってきそうですね。コロナでなにか良い影響・悪い影響はありましたか?
豊岡さん:率直に言って弊社のビジネスにとっては良い影響です。具体的には今まで企業は不動産オーナーに敷金を預けることを常識と考えていましたが、このコロナ禍で事務所の広さなどの効率化を考えていくなかで、なぜ敷金を不動産オーナーに預けるのか?との疑問が借りる側の企業で増えてきました。
豊岡さん:また、事務所も店舗も空室が多く出ることで、不動産オーナー側にもどのようにしたら空室が埋まるのか差別化を模索し、敷金を減らすことを解決策として見出してます。
豊岡さん:また賃貸借契約の更新時に企業が他の物件に移転・退店されたくないので、企業側の要望で今預かっている敷金を半分返して契約を更新するケースも出てきています。
たまご:やはりコロナの影響で特にオフィス用の物件は空室が増えていますよね。空室を埋めるために敷金を下げるという動きになっているんですね。
豊岡さん:一般的に空室率は5%を超えたら危ないと言われています。5%を超えたら借り手が有利な契約になってしまうということです。
たまご:借り手の方が賃金の交渉などが可能になってしまうということですね。
豊岡さん:そうです。それが現在東京都の空室率が6.3%にも昇っているんです。コロナ前は2%を切っていました。(参照:オフィスマーケットデータ/三鬼商事株式会社)
たまご:ここ2年で3倍以上にも増えたんですか?!それはかなり問題ですね。
豊岡さん:この数値はリーマンショック以来、最も上がっています。オフィスに出社する人も少ないのでオフィスビルの中に入っていた飲食店も売上が芳しくなく、撤退するところも出てきていますね。
たまご:リモートワークの増加がここまで経済に影響を与えていたんですね。
インフレが始まったら借り手は損をする時代に
たまご:今後不動産業界において敷金・保証金の仕組みはどのように変わっていくと思いますか?
豊岡さん:徐々になくなっていくと思いますね。理由は2つあって、まず弊社が企業の経営者300人を対象にアンケート調査を実施したところ、50%以上の方が『敷金が高すぎる』と答えました。それに加えてコロナ禍の空室率で借り手が有利な状況となると、企業側の要望に沿って敷金は減少傾向にいくと思います。(参照:都内企業の経営者・役員300人に聞いた「コロナ禍におけるオフィスの在り方」に関する調査)
豊岡さん:2つ目の理由はここ30年間がデフレなんですよね。でも2023年あたりからインフレになると言われています。インフレになるということは、最初に敷金を1,000万円預けたとして、退去が2年後だったとしたら2年後の価値で1,000万円を返却されることになります。それは借り手が損をすることになります。
たまご:インフレの状況では現金を長期間預けて眠らせておくと預ける側に不利に働いてしまうということですね。
豊岡さん:その通りです!
たまご:敷金の制度がなくなったらオフィスを追い出されるようになりますか?
豊岡さん:そうならないように弊社が保証する会社として間に入れたらいいなと思います。
豊岡さん:スタートアップの会社などは賃料は払えても敷金が高すぎて良いビルにオフィスを借りられないという場合も多いです。おしゃれなビルや知名度のあるビルにオフィスを構えることは、企業のブランド力が上がったり、採用に良い影響を与えたりします。弊社がサービスを提供することで成長するスタートアップが良いオフィスを構えるお手伝いができれば良いなと思っています。
たまご:素敵なビルに入っている企業の方が働きたい!って思いますね。恵比寿のタワーにオフィスを持っている社長さんも「賃料はめちゃくちゃ高いけどこのタワーのブランドを借りてるんだ!」と言ってました。採用はもちろん取引先相手への信用などにも繋がりますね。
日本はお金の回りが悪すぎる
たまご:豊岡さんの今後の目標は何ですか?
豊岡さん:坂本龍馬の言う「世に生を得るは、事を為すにあり」という言葉に触れて、事の実践を夢としてとらえています。私にとって事とは日本経済の再活性化なんですね。
豊岡さん:つまり寝かせている資金を活きた資金に変える事で世の中にそのお金が回り、経済が活性化する、これをより広く実現していきたいと思っています。
豊岡さん:弊社にはいろいろなお客様がおりますが、例えばわかりやすいのはベンチャー企業のお客様であれば敷金が使えることで人材採用資金に充てたりしています。このように寝かせていたお金が活きたお金になっています。
たまご:日本経済を回すことは日本人の今の最大の課題だと思います。
豊岡さん:日本は今お金の周りが悪すぎます!今福岡にも拠点を持っているのですが、地方で仕事をしていて思うのは日本国内で情報格差・リテラシーの格差が激しいことと、地方にまでお金が回っていないことです。
豊岡さん:福岡には良い材料とノウハウを持っているのにスタートアップだから信用がなく資金調達の方法がないという企業がたくさんあります。
たまご:地方のベンチャーだと銀行は融資してくれないんですね。
豊岡さん:スタートアップ企業で銀行が融資してくれることなんてまずないです。これを解決するためには地域産業をもっと作っていくべきなんです。
たまご:地方と東京では情報格差はすごいですよね。たとえば東京で敷金保証制度が当たり前になったとしても、地方の不動産オーナーには門前払いされるなども有り得る話ですよね。
豊岡さん:アメリカだとシリコンバレーと首都はすごく離れているのに情報格差なんてほとんどないですよ!
たまご:時差があるくらい離れているのに一体化されていますね。
「担保をとるな」by安田善次郎
たまご:豊岡さんがキャリアを形成していく中で影響を受けた方はいらっしゃいますか?
豊岡さん:私の祖父が「先人の知恵を使え」とよく言っていました。なのでよく時代小説や先人の伝記を読むのですが、特に影響を受けたのは安田善次郎という方です。その方は現在のみずほフィナンシャルグループの創業者です。明治維新の時に日本の資本主義社会化に一番影響力を持っていた方だと言われています。
豊岡さん:彼は「担保をとるな」と言ったんです。将来性を期待できる会社には担保を取って投資するのではなく、ビジネスモデル・事業を見てその人自身に投資しなさいと。
豊岡さん:安田さんは江戸時代に砂糖水を売っていただけの会社に投資して、後々その会社は大きなセメント事業を営む大財閥になりました。
たまご:先見的な目をお持ちの方だったんですね。今の日本には将来性を見据えて先行投資できる企業が必要ですね。
たまご:最後に豊岡さんから現在の就活生へメッセージをお願いします!
豊岡さん:自分の夢を見据えて諦めず、どうしたらその夢が達成できるかを考えて進んでください!社会人への第一歩としてぜひ思い立ったことは全部実行に移してみてほしいなと思います。
株式会社日商保 会社概要
会社公式ページ | https://jpcpg.co.jp/ |
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編集後記
私も今の社会情勢を見て、日本はもっと経済的な強さを世界に発信できなければならないなと感じていました。
SNSで日本が今でもGDPは世界3位と知ったのですが、日本に住んでいる当の私たちは全くその自覚がありません。
むしろ日本って世界に置いていかれてる?という意識があります。
日本に経済大国というイメージがなくなってしまったら、隙を付かれてどこかの国が侵攻してきてしまうかもしれません!
これは一人が思い立ったくらいではすぐに動きは変わらないのだろうけれど、一人ひとりが日本の経済を回して日本の強さを見せつけようと意識改革してくれたら、少しは今の日本の世界各国からのイメージが変わってくるかなと思います。
その第一歩として動かせていない大金たち、敷金・保証金を動かしていく日商保のサービスがどんどん日本の常識になっていって欲しいなと思います。
投稿者プロフィール
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恵比寿から港区女子を夢見てライターの仕事をしている新卒OLです。
夜景とイルミネーションが好きで、いつかタワーマンションに住んで都会の夜景を独り占めしたいと思っています。
インスタでハッシュタグ「豪邸」で調べることと、お風呂上りにベランダでオレンジビールを飲むことと、おいしいボンボンショコラを一日一個ずつ食べることと、ミルクティーを飲みながら読書をすることが好きです。
よろしくお願いします。